シャルキュトリー・ガリビエ


美しい静かな里山で営まれる、小さなシャルキュトリー


森の中にひょっこり現れる、童話の中に出てきそうな三角屋根の木の家。ここは石川県の小松郊外だが、まるでフランスの田舎にでも迷い込んでしまったかのようだ。小鳥やリスがちょこんと遊びに来そうな牧歌的な風景の中にある。扉を開けると、こぢんまりとしたシャルキュトリーだった。シャルキュトリーとはフランス語で、ハム、ソーセージなどの食肉加工品や、それらを製造・販売する店のこと。ガリビエという店名は、グルノーブル近郊、スイスとの国境沿いにある「ガリビエ峠」から名付けたという。

子供の頃、父親に作ってもらった料理が美味しくて忘れられない、という店主の竹友雄三さん。父親は、海外に出張してはその国の料理を作ってごちそうしてくれたそうだ。そんな幼少時の楽しい思い出が、竹友さんを料理の道に向かわせた。高校を卒業後は料理の専門学校へ通い、料理人としてレストランで働いた。技術をさらに深めるためにフランスへ渡ったが、バカンスの時期に訪ねたシャルキュトリーを手伝ううちに、次第にその魅力を感じるようになっていったという。

「フランス料理の世界にはどこか華やかさがありますが、シャルキュトリーの仕事はどちらかというと地味で職人気質。シンプルに素材と向き合い、ただひたすら黙々と、一見単調とも思われる作業をする。自分にはこっちの世界のほうが合っているなと思ったんです。」

3年間フランス各地で学んだ後、岐阜県の飛騨にある、肉好きの間ではよく知られ、誰もがうっとりしてしまう、肉の加工・燻製工房「キュルノンチュエ」に7年務めた。そしてこの地で独立。若い頃に金沢で働いたことがあり、文化も自然もある、この地域のことが印象に残っていたのだという。

「シャルキュトリー作りは、毎回ほぼ同じ作業を淡々とするのですが、素材を見極めながら材料を変えたり、少しずつ改良を加えていく、その過程が楽しいです。あまり色々なものは足さず、素材そのものをどう生かすか、をいつも考えています。今は一般の人が食べやすいものを中心に作っていますが、いずれはフランスの伝統的な加工品をもっと作ってみたいですね。例えばブーダンノワールとか。」

店に立つのは主に竹友さんの奥様。商品について、ひとつひとつ丁寧に説明してくれる。ショーケースに並ぶソーセージやテリーヌ、サラミなどは、どれも素朴ながら端正で、ものづくりに真摯に向きあう心遣いが感じられる。素材の良さを素直に引き出し、ごまかしがない。石川県は、害獣の被害も多いようで、駆除されたイノシシやシカを加工する、「Re(再び)」+「Gibier(ジビエ)」=「Rebie(リビエ)」という試みも行っている。夫婦二人三脚で、この地でできることをコツコツと少しずつ、自分達らしいかたちで実現している。


写真:高野尚人 文:江澤香織

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シャルキュトリー ガリビエ

石川県能美市徳山町ヤ55-1

TEL 0761-58-2013

10:00-18:00 火休

http://charcuterie-galibier.jp

ゆっくり買い物を楽しんで欲しい、との思いから、お子様が遊べる小さなスペースを設けています。どうぞご利用下さい。